藤澤武夫のことば
惚れるということ
(1954.S29.11葵弘報 藤澤武夫)
男性の一日を分析すると、眠ることを除いては、仕事と家庭生活とに別れるが、多くの女性の場合は、ほとんど家庭の問題で頭が一杯であろう。
男性にとって、仕事がそれほど重大な部分を占めるのだから、これに惚れ込むことが大半だと思う。
さてその惚れ方であるが。
男性と女性と恋愛関係に入る場合に、男性が積極的にでるのが一般的と言えるだろう。
この場合、男性の権威を将来その女性から侵されることを嫌うが、または女性により以上に惚れてもらいたいと考えて、秤を作り、加減して愛の表現をしたとしたら、その反射作用が女性の心に写るであろう。(秤は正直なものだから、見せかけのもので、同じ大きさの真実と釣り合わすことはできない。大きな真実がほしかったら、それだけの真実をつくすべきだ)その場合、女性から完全に惚れられることなく、やはり女性は女性で秤をもってこれに応えるであろう。
仕事もこれに似ているのではないだろうか。
心にわだかまりがあると存分に惚れることさえもできないらしい。