藤澤武夫のことば
人間感情の尊重を
(1967.S42.1 社報 藤澤武夫)
対象の観点
ユーザーとメーカー、販売店とメーカー、代理店とメーカーなどそれぞれの関係と立場があり、それなりの人間感情というものがある。
我われにとって、メーカーからの議論はしやすい。しかし、ユーザー、販売店の立場からみることも重要であることをむしろ知るべきである。
営業とは人間感情をとらえるところから始まる。
同じ言葉でも、どの人が喜び、どの人が嫌うかということを充分知らなければならない。金や地位や物ではなく、あいつは好きだと思われることが必要だ。
お客さんからお金を頂戴する人の話し方がある。これを探すことこそ喜びがある。
私が話をすれば、納得させられるとよく言われる。これは地位だけだろうか。
それについて、私が皆に言えることは、「人間感情の尊重」……これに細心の注意を払っているからだということである。
「怒鳴る」ではないか、あるいは「高飛車」ではないかと言われるが、それでも、納得させられるのは何か。といえば「人間感情の尊重」の積み重ねがあってのことだと断言する。
従って、これのない人が、高飛車にものを言っても、鉄砲玉で、ハネ返りがない。
営業所設立の第一の眼目はここにおくべきだと考える。
営業は生きものである
営業には固定させることのできるものと、掴まえ固定してはいけないものと二つある。しかし、我われはよくその逆をやる。固定すべきものを掴まえないで、言いかえれば、掴まえる能力を持たないで、人間の数をやたらとふやす。また、掴まえてはいけないものを理論的だといって無理にネジふせる。
このあやまちは我われもおかしてきたし、代理店もやってきたに違いない。
私が営業は生きものであり、人間感情の尊重を強調する理由はここにある。
代理店のやっている仕事を営業所がやらないで、単に支店に持っていってはいけない。しかし、企業の中には「大勢の考えることのできる人」がいることを想起して、さらに深く掘り下げを必要とする問題は、この人達に持ち込んで解決してもらうべきである。