本田宗一郎のことば
独創性あってこそ進歩
(1955.S30.2 明和報 本田宗一郎)
赤穂浪士の仇討が ― 良、否は別として ― 仇討としていちばん感銘が深いのはなぜだろうか。
誰か一人で吉良の首だって、取れないことはあるまい。
四十七人同じように、それぞれの境遇は違いながら、一つの目的に、一つの情熱に団結して目的を達したことにあると思う、と大仏次郎先生の本に書いてあった。
私はこの仇討などと言う小さな目的 ― もちろん徳川時代だから仕方があるまい ― よりもはるかに高い、この全世界の知能の競争の真唯中に、ホンダが一つの集団となって入り込むことが、崇高なことだと確信している。
このことが私にできなければ、諸君が私に続いてほしい。このことが完成したなら、日本人としての、また日本工業の一つの見本となり、代表ともなり、他の会社も各々の事業についての再認識をして、このホンダの歩んだ道を踏むことになるだろう。
つまり、ホンダを日本重工業の世界への進出の突破口にしたい。