本田宗一郎のことば
社長の希望
(1952.S27.2 月報 本田宗一郎)
我われの主人は顧客であり、顧客はよい製品を買ってくれるが、製品を作る我われの苦労が、どんなひどい苦労でも、苦労賃というものは払って下さらぬ。この二十七年度は、それだから苦労せずに優れたよい品を皆の協力によって作っていきたい。
このために頭を使い、優れたアイデアによって他社の追随を許さぬ製品をぜひ作りたい。
一昨年(昭和二十五年)はわが社は浜松の本田技研であったが、現在では日本のホンダになった。今年こそ、世界のホンダにならねばならない。しかも今年の前半に世界のホンダになるように盛り上げねばならない。
我われは一年、二年とは待ってはおられぬ。情熱が冷めてしまう。鉄は熱いうちに打てと言うではないか。
今まで発展してきた勢いにさらに加速度を加えて、この半年間に伸ばしてしまいたい。後半期は楽々と仕事を進めて、アメリカ人並みの生活水準に達し、文化生活をエンジョイしたい。
かくするには皆の協力がなければならぬ。社長のこの望みをかなえられるようぜひ努力せられたい。