本田宗一郎のことば
冗句(Joke)のない人生は無味乾燥だ
(1962.S37.3 社報)
これまでの日本人の生活には、ウィットやユーモアに富んだ冗句というものが閉め出されていた。重苦しい沈黙の中で、堅苦しい姿勢で、表現することを押さえつけられてできてきた。
人間というものは機械と違って、一定の能力を連続して発揮できない。疲れ、飽き、たちまち効率が落ちる。このために、人間には休息と気分転換が必要なのだ。冗句は単調な生活に句読点をつける瞬間的な笑いの慰安であり、警告であり、気分転換である。これが緊張から解放し、疲労を忘れさせ、気分を明朗に活気づけてくれる。故に人生は明るく楽しく保たれるのだと思う。これからの私達の生活の中に、洗練された冗句がどんどん飛び交うようにならなければ、思わせぶりで哲学的な暗い表情や陰気な微笑は、いつまでも私達の顔から追放できない。