藤澤武夫のことば

世界をリードする仕組みを

(1965.S40.11 社報 藤澤武夫)


変化に対応する新組織を


係長、班長というものは、数量なり、品質なりの与えられたものを、維持する役目はあるけれども、何か、刻々と情勢が変化する時には、「長」としてよりも、むしろ、その人「個人」として動いている。


ところが、係長、班長というものは、必ずしも、その問題のエキスパートというわけではない。


何でもかんでも、「長」が受けもっていってうまくいくわけはないんです。


ここに、古い組織図と、みんなで検討している組織図との違いがでてくる。


世界を常にリードしていける、つまり、ここ、一年や二年の勝負ではなく、五十年、百年というものをリードしていける体制をつくって、次の人にバトンを渡してゆく義務を我われは持っている。


重要なことは、いつでもリードしていけるには、どうすればよいかということですが、これは、刻々と変化する情勢を的確にキャッチして、企業の中に入れ、組織の中でこなして、それを安定させ、次の人にバトンを渡すということです。


世界に通用するエキスパート

 

今まで、どこの企業でも、人間の個性というものが充分に発揮できないような仕組みでやってきている。


だから組織を変えても、長を入れ代えても、ちっとも変わりばえしないんです。


人員整理をしなければならんようなときには、真先きに、管理職である「長」からやめていってもらうというようなことになっている。


だから、今日、「長」であっても、明日はどうなるかは、わからない。


しかし、自分がエキスパートであれば、これについては、今の世界の設備の中にあっては、エキスパートであるという自信があれば、何も恐れることはない。


そして、その場合に、私は、よそから、みんなを、引っこ抜きにくるだろうとさえ思っている。


よそから引っこ抜かれるような人材が、本田技研の中から続出すれば、本田技研のこの思想というものが、日本中に広がっていって、もっとすばらしい日本になると思う。


アメリカにも、ドイツにもない、日本の中にもない仕組みを、ひとつ、みんなの力で作っていっていただきたいものです。